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ユーザ企業自身がITの持つ可能性を活用していくべき

日本のIT産業は、30年前の技術に最適化されている。しかも、当時のプログラミングで解決できなかった問題を、企業文化の中に取りこんで属人的に対応して、そのままになっている。それを「業務知識」と呼び、それを暗黙知のまま継承することを強いている。だから、Coplien氏が進めているような、人材の配置を含めた開発プロセスそのものを見直すことを要求する技術を取り入れる余地が無いのだ。

http://d.hatena.ne.jp/essa/20080601/p1

企業内の情報システムは、もともと人手で行っている業務を自動化するために生まれたものです。業務フローを書いて、IT化する部分を四角で囲み、それを機能単位に分解して製造します*1。人がやっている業務の一部を自動化するのだから、業務にぴったり合うシステムが求められます。業務を置き換えるシステムを作るため、SIerはソフトウェア開発を外注し、パッケージを購入し、機器をベンダに発注します。

企業内にいるオペレータだけがシステムを操作し、一般の従業員はシステムに触れないような時代はよかったでしょう。業務とシステムの間には手慣れたオペレータがいる時代だったのです。今日では企業内にいる誰もがシステムを操作できる環境になり、それゆえシステムが解決できる領域は大幅に広がりました。システムが業務プロセスをドライブするようになると、システムが業務に与える影響は大きくなります。

30年前からの開発プロセスを変えることは、業務を重視するSIerのコアコンピテンスを否定することになり、ひいては元請けの地位を揺るがしかねません。ITの持つ可能性を封じ込めて、自分たちが理解できる業務の領域を出ないようコントロールしているように思います。ITの持つ可能性を最大限に活用するには、ユーザ企業自身が主体的に挑戦していく必要があります。

たとえSIerSaaSアプリケーションを扱うようになっても、基本的な考え方は変わらないでしょう。パッケージの購入がSaaSライセンスの調達に変わり、機器納入がデータセンタ賃貸に変わるだけです。SIerにとってソフトウェアは単なる道具でしかなく、業務の一部にSaaSがはめ込まれるだけです。

*1:製造工程って言葉は嫌いだけど