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アジャイルな家計の見積もりと計画づくり

家庭を支える技術 Advent Calendar 2015の13日目です。

www.adventar.org

本記事では、我が家の家計を支える技術を紹介します。昨年も家計を支える技術という記事を書きましたが、今年は環境の変化に対応したグレードアップ版をお届けします。タイトルは有名書籍からパクりました。どうぞお許しください。

ちなみに、本業ではソフトウェア開発のプロセス改善を生業としているので、家庭のプロセス改善も好きです。

なお、本記事では手元に入ってくるお金のことを収入と表記します。正確には所得(税引き後のお金)と給付金(産前産後休業や育児休業の期間中に支給されるお金)ですが、文章が堅くなってしまうので収入と書きます。

背景

今年の秋に子どもが生まれました。

これまで夫婦の収入に大きな差がなかったため、それぞれ収入を懐に入れつつ生活費を折半する運用としていました。しかし、産前産後休業や育児休業の期間中は妻の収入が約66%になります。さらに、来年には私も育児休業を取得する予定なので夫の収入も約66%になります。この痛みは夫婦で分かち合うべきということで、収入差を何とかするスキームが必要になりました。

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世間で最も有名なソリューションはお小遣い制でしょう。しかし、お小遣い制にはいくつものデメリットがあります。

  1. 透明性がない。
  2. 自己管理の意識がなくなる。
  3. 家計管理者に作業が集中する。

つまり、お小遣い制を導入すると透明性がなくなるため、信頼関係が損なわれるおそれがあります!また、家庭というチームの自己組織化が阻害されるため、お金を管理できなくなって使途不明金が発生するおそれがあります!全然アジャイルじゃない!

というわけで、アジャイルな家計の見積もりと計画づくりが求められる運びとなりました。この辺はうまく交渉したつもりです。

我が家の家計スキーム

夫婦の収入を均等配分して各自の予算にします。家賃や食費などの共通支出は折半します。また、毎月定額を共同貯蓄に出資します。各自の手元に残ったお金が利益になります。

一枚絵で表すと下図になります。

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この家計スキームには以下のメリットがあります。

  • 費用負担を公平にできる
  • 貯蓄を増やすモチベーションが生まれる
  • お互いの貯蓄額を非公開にできる

素晴らしいですね。導入しましょう。しかし、どんなに優れたスキームを考えたとしても、日常の生活に定着させる仕組みがなければ長続きしません。そこで、我が家では予算計画、実績精算、振り返り、年末調整のプロセスを決めています。

予算計画

年初に、昨年の源泉徴収票から今年の収入を見積もります。見積もりは月単位で行います。産前産後休業や育児休業を取得する月は標準報酬月額の66%を計上します。

我が家では下表のようなスプレッドシートを作りました。これは例です。月収100万円、いいですね。

夫の収入 妻の収入
2015/1 1,000,000 1,000,000
2015/2 1,000,000 1,000,000
... ... ...
2015/11 1,000,000 660,000
2015/12 1,000,000 660,000
合計 12,000,000 9,000,000

この例では年間300万円の収入差があります。したがって、収入差を補正するには年間150万円、すなわち毎月12.5万円を渡します。この金額を収入補正と呼びます。

育児休業の予定や収入の見立てが変わったら収入補正も見直します。

実績精算

毎月末に家賃や食費などの共通費用を折半します。お互いの立替分を合算して、多く立て替えている方が精算分を渡します。

例えば、家賃20万円を夫が立替払いしており、食費5万円を妻が立替払いしている場合は、妻から夫に7.5万円を渡します。これで共通費用が折半になります。精算分が7.5万円、収入補正が12.5万円ということは、夫から妻に5万円を渡せばよいことになります。

実績精算の考え方をまとめると下図になります。

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現金の手渡しは1万円単位で行います。差額は来月の実績精算に持ち越します。例えば、夫から妻に53,121円を渡す必要がある場合、今月は60,000円を渡しておいて来月の実績精算で6,879円を反映した金額を計算します。

実績精算を手計算で行うと絶対に長続きしないので、スプレッドシートで省力化しています。

振り返り

共通費用を折半する際には、食費や光熱費などが毎月どれぐらい掛かっているのか振り返ります。もし外食費を使いすぎなら引き締めるといった対策を考えます。

振り返りは月次グラフを見ながら行います。

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数年分のデータを取っておくと、食費や光熱費が年間どれぐらい掛かるのか予測できるようになります。予測データを活用することで、より精緻な予算計画を立てられます。さらに、もしもの事があって働けなくなった場合にどれぐらい家計を維持できるのか予測できるようになります。

年末調整

年明けに源泉徴収票をもらったら収入補正を再計算します。生じた差額は次の年に持ち越します。

まとめ

本記事では、夫婦の収入変化に対応できる家計スキームを提案しました。日本ではポピュラーなソリューションであるお小遣い制には重大な欠陥があり、家計の透明性や家庭の自己組織化が損なわれるおそれがあります。本記事の提案手法を用いることで、夫婦にとってWin-Winな関係を構築しながら変化に対応していくことが可能です。

明日は id:Kwappa さんの担当です。